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(5)現在承認されている治療薬について [健康]




 現在、国内で承認されている新型コロナウイルスの治療薬は5種類です。ま
ずは、承認が行われた時系列順に3つの治療薬の特徴、そして作用機序および
対象者について学んでいきます。また、最近特例承認された抗体カクテル療法や
治療薬に関しては、次の項目で学んでいきます。


<デムレシベル>
 
 2020年5月、国内初の新型コロナウイルスの治療薬として、審査を大幅に簡
略化する「特例承認」の制度を適用し承認されました。
 元々は、アメリカの製薬会社により、エボラ出血熱の治療薬として開発が進め
られ、エボラ出血熱やマールブルグ熱の治療薬として使用されている点適薬で
す。レムデシベルは、ウイルスの複製に関するRNAポリメラーゼという酵素を
阻害することで、ウイルスの増殖を抑制する効果がある薬です。
 対象者は、供給量を踏まえて体外式膜型人口肺(ECMO)装置などの重症患者
に限定されていましたが、2021年1月の添付文書改訂にともない中等症患者へ
も投与が可能となりました。また、投与期間の基本は5日間であり、最大でも
10日間とされています。

 現在、レムデシベルを投与することにより回復が早まるといった効果を示す
報告がある一方で、多臓器不全や敗血症、急性腎臓障害などの重篤な症状が出た
という報告もあることから副作用を懸念する声もあります。


<デキサメタゾン>

 2020年7月、国内では2例目の治療薬として承認されました。この薬は、合
成副腎皮質ホルモン剤(ステロイド薬)の一つで、抗炎症作用、抗アレルギー作
用、免疫抑制作用があります。また、日本国内でも1960年代から現在に至るま
で、様々な疾患に対して使用されてきた薬剤です。具体的な疾患としては、
慢性副腎皮質機能不全、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、気管支喘息、
悪性リンパ腫、重症感染症などが挙げられます。

 新型コロナウイルス感染症の重症者では、肺障害および多臓器不全をもたら
す全身性炎症反応を発現することが確認されています。そのため、デキサメタゾ
ンにはこれらの有害な炎症反応を予防又は抑制する可能性が示唆され、その効
果が証明されました。つまり、デキサメタゾンは炎症を抑える働きをもつものの、
ウイルスを攻撃する作用はないため、感染症による炎症から肺などを守ること
が目的とされています。

 この薬の使用方法としては、初回の服用から10日間にわたり継続して服用す
ことが必要とされています。イギリスでの治験によると、治療開始後28日目
時点での死亡率が標準治療に比べると優位に低下することが確認されました。


<バリシチニブ>

 バリシチニチブは、2021年4月に承認された3例目の治療薬です。これまでは、
サイトカインという細胞間の情報伝達を行うタンパク質が深くかかわる間接リ
ウマチやアトピー性皮膚炎などを適応症として承認されていましたが、新たに
新型コロナウイルスによる「肺炎」に対する適応追加が特例承認されました。

 バリシチニブは、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬というものが正式名称で
す。ヤヌスキナーゼ(JAK)とは、体内で炎症を引き起こす要因となる物質であ
あるサイトカインによる刺激を、細胞内に伝える際に必要な酵素です。この酵素を
抑えることによってサイトカインによる刺激が細胞内へ伝達されるのを抑え、
炎症が生じるのを防ぎます。特に、免疫システムが暴走して患者の症状を悪化さ
せる「サイトカインストーム」を抑える効果が期待だれています。

 対象者は、酵素吸入、人工呼吸管理、または体外式膜型人口肺(ECOM)装置
の導入を要する中等症患者および重症者で、入院下で投与が行われます。総投与
期間は14日間までとされています。また、投与時にはやむを得ない場合を除
き、抗疑固薬の投与などによる血栓寒栓予防を行います。さらに、レムデシベル
と併用することでレムデシベル単独療法と比べ回復までの期間が短縮すること
などが確認されました。







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