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早起きは金持ちになりやすい? [経済]

 本当に「早起きは三文の得」なのだろうか?


 ときには得することもあるかもしれないが、確実ではない。 他人よりも早く起きる
ことが億万長者への近道ならば、スクールバスの運転手や牛乳配達をしている人は、
みんな金持ちになっているはずだ。


 だが実際には、世の中はミリオネアではない人のほうが圧倒的に多い。


 私も昔は両親の教えを信じて、他人より早く起きれば収入が増えて、やがては金持ちに
なれるものと思っていた。 


 私は少年時代、週末にゴルフ場でキャディのアルバイトをしていた。


 その最初の年、ちょっとした問題が起こった。 古株のキャディ数人がゴルフ場の
お偉方に向かって、仕事の配分が不公平だと訴えたのだ。


 彼らは、チップをはずんでくれる客がみんな、キャディ長の身内だけに持っていかれて
しまうと不満の声をあげたのである。


 この問題を解決するため、お偉方は機械的に仕事を振り分ける「先着順」方式を
採用した。

 毎朝、職場に一番乗りしたキャディが、最初のパーティーにつくのである。 しごく簡単、
かつ民主主義的な方法だ、、、だが、まったく非生産的である。


 この方式は長続きしなかった。 最初に抗議の声をあげたのは、比較的ゴルフのうまい、
勝負好きの客たちだった。 


 それまでいつも、いちばん腕のいいベテランのキャディがついてくれたのだから、
今後もそうしてくれないと困る、と言いだしたのだ。


 そういう客は毎回同じキャディを指名することが多かった。 そして、ゴルフバッグを
担いだキャディの仕事ぶりによってチップをはずんだ。

 むろん、キャディの仕事はただ単にゴルフバッグを担ぐことだけではない。


 優秀なキャディというのは、インストラクターとコンサルタントとコーチを励まし役を
一つにしたようなものなのだ。


 だからこそ、役に立たないキャディをあてがわれると、腕に覚えのある客たちは
腹を立てたのである。


 「先着順」方式に大反対したのは、そういう客たちだった。


 この1件は、アメリカにおける資産形成の側面を示すものである。 キャディであろうと
弁護士であろうと、より生産的な人がより多くの金を稼ぐのだ。


 弁護士がただ単に法廷手続きにいちばん早く現れたからといって、勝訴するとは
かぎらないのである。

 いずれにせよ、「先着順」方式は失敗だった。 この方法が取り入れられた最初の
土曜日、私は午前7時にキャディ・ハウスに到着した。


 ハウスのなかはすでに人で埋まっていた。 


 それで、翌週の土曜日は午前4時に起きて自転車に飛び乗り、4時30分にゴルフ場に
着いた。


 それでもいちばん乗りではなかった。 すでにキャディ・ハウスの前には仲間が
5、6人立っていた。
 

 いちばん乗りしたのは、男子トイレで夜を明かした連中だった。 なんと、前夜の
11時からそこに陣取っていたのである。


 こんな競争には勝てっこない。 いったいこれが、時間とエネルギーの有効な使い方と
いえるだろうか? 蓄財についても同じことが言える。


 一代で億万長者になった人たちはみな、自分の能力を最大限に発揮することができて、
業績に対して報酬が与えられるような職業を選んでいる。


 勤務時間に対して報酬が与えられる職業ではない。 財を成すには、ただ単に始業時間や
起床時間を早めればいいというものではない、、、


 大事なのは、いかに能力をフルに発揮できるかということなのだ。


 この話が、財産を築くこととどんな関係があるのだろうか? つまり、業績に応じて
報酬が支払われる環境に身を置くことさえできれば、最大限に能力を発揮しようという
意欲が湧き、ひいては経済的成功につながるということである。



 他人より早起きするのはさして難しいことではない。 大変な知性を要するわけでもない。
それよりも、もっとちがう面でいちばんになるよう心がけるべきである。 たとえば、
あなたが画期的な製品を発明したとしよう。


 これで、自分より早起きしている連中の鼻を明かすことになる。 そういう人たちは
独創的な製品を作るより、職場に早く着くほうが重要だと思っているからだ。


 創意工夫のないありきたりの製品やサービスを満足している人たちは、夜明け前から
起きたらいい。 おそらく過酷な競争社会で生き残っていくためには、1日12時間
働かざるをえないだろうからだ。


 億万長者や高額所得者に関するかぎり、、、


 起床時刻の早さと資産とのあいだには、統計的に重要なつながりは見られない。


 億万長者は、仕事がある日には午前6時40分頃に起きる人が最も多い。


 平均起床時刻は6時25分。

 5時40分より早く起床するのは5人に1人くらいのものである。


 私自身は、以前はもっと早く起きていた。 講義のない日は、1日8時間か10時間ほど
本や論文の原稿を執筆していた。 だがそのうちに、1日3、4時間しか書かないほうが、
結果的に早く書き上がることがわかった。 結局、ベストセラーを生み出すのは、1日
10時間の努力ではなく、書かれたものの質の高さなのである。


 毎日午前3時に起きてバリバリ働く実業家が、世間には大勢いるのだろうか?


 実際のところは誰にもわからない。 さまざまな業種の億万長者について統計を
とると、仕事がある日の起床時刻がほぼ同じであることがわかる。 会社役員の平均
起床時刻はもう少し早いが、さしたるちがいはない。








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